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第三回 行政機関ルートの活用

(1)知的財産権侵害の問題を発見したら、
特許・実用新案・意匠の侵害→地方の知識産権局
商標侵害・不正競争・企業秘密→地方の工商行政管理局
                       地方の公安局
著作物→地方の版権局
食品・薬品→地方の食品薬品監督管理局
品質→地方の質量技術監督局
不法輸出入に輸出税関登録→税関総局
差止→地方税関局
に申請をする。費用もそれほどかからない。
これらの機関を活用するに知的財産権司法鑑定機構の司法鑑定書は有効だ。

(2)合弁企業の営業秘密管理
一般的な秘密保持条項では足りない。
 秘密保持契約を締結する。

・義務違反があった場合の制裁の内容明記
・違反があった場合の違約金の支払い責任の明記
・秘密管理の責任者の明記
・社外への秘密情報の持ち出し禁止
・勤務時間外の使用禁止
・複写の使用禁止
・従業員のコンピュータに保持された情報の閲覧・複写できる権限
 ・営業秘密保持努力していることを示す証拠の形成

事例1

 中国柳州軼新コンピュータソフトウエア有限会社はあるソフト関連の博士を招聘し、鉱山管理用の「汎用の電気提供CADシステム」の開発を任せた。 その前に両者は、博士とソフト開発の契約を交わした。 それによると、開発されたソフトの著作権は軼新社にあると定められた。 博士はソフト開発に成功した。軼新社はそれを販売し、非常に高い利益を得た。 これを見て、博士は他の人と一緒に北京で会社を設立し、同じソフトの販売を開始した。 軼新社はそれを気づき、博士に会社の著作権を侵害しないよう警告した。 警告を受け、博士は販売の取止めを約束したが、実際のところ、こっそりと販売し続けていた。 そこで、軼新社は博士に企業秘密侵害されたとし、柳州公安局に通報した。 柳州公安局は立件した後、先ず、軼新社が主張している「汎用の電気提供CADシステム」のソフトは本当に企業秘密に属しているかどうか認定する必要があった。 そして、北京知的財産権司法鑑定機構に鑑定を依頼した。 鑑定の結果、このソフトは軼新社の企業秘密に属し、博士の行為は軼新社の企業秘密侵害する疑いがあった。 公安局はすぐに博士を逮捕し、身柄を検察院に送った。 検察院は柳州裁判所に提訴した。裁判所は審理を行い、博士は企業秘密侵害罪を犯していると認定され、3年の実刑が言渡された。

事例2

 北京のR氏は北京自動車電機制御ソフト社の社長在任中、職務上の便宜を利用して、水面下で「権利義務の譲渡契約」を他人と結ぶなどの方法で、勝手に会社の売り上げ金計50万人民元を新しく設立されたB社及びR氏個人の口座に振り込んだ。A社の技術資料と顧客リスト、営業契約を盗み、B社の経営活動に使った。 A社に600万の経済損失を与えた。 A社はR氏とB社がA社の技術秘密と経営秘密を侵害されたとし、北京公安局に通報。 公安局は立件し、取り調べに際して、A社の自動車電機制御に関する技術とA社の顧客リスト、営業契約書は企業秘密に属しているかどうかについて、北京知識産権鑑定機構に鑑定を依頼した。 鑑定機構はこれらの資料は企業秘密と認定した上、公安局が入手したB社の技術使用、経営資料とA社の企業秘密と比べて、鑑定を行った。 鑑定の結果は両者は基本的に同じであるというものであった。 これに基づいて、公安局は容疑者のR氏を逮捕し、身柄を検察院に送った。 検察院は北京裁判所に提訴し、裁判所は審理を経て、R氏とB社は共同にA社の企業秘密を侵害していたことを認定した。 そして、R氏に企業秘密侵害罪で実刑5年、且つ罰金50万人民元;B社に罰金610万人民元の判決を言い渡された。

事例3

 大連のA社はプリンタのインクを作っている企業で、管理職のT氏と「秘密協議書」を結んだ。 それによると、T氏はA社の秘密保持義務があった。 その後、T氏は会社を辞め、B社の管理職に就き、A社の配合方法をB社に提供し、インクを作っていた。 このため、A社はT氏による企業秘密侵害を受けたとし、公安局に通報した。 公安局はB社の生産されているインクを証拠として提出し、北京知的財産権鑑定機構に鑑定を依頼した。 鑑定機構からA社プリンタのインクの配合方法は企業秘密に属すると認定した上、B社の製品とA社の製品を検査測定の機関に送り、分析してもらった。 分析の結果に基づいて、鑑定機構は両社のプリンタのインク成分は同じであることを認定した。 T氏は公安局から検察院に送られ、検察院から裁判所に提訴された。 T氏からA社は既にインクの特許を出願していたし、該特許も公開されていたし、彼の行為は企業秘密の侵害に当たらないと主張した。 裁判所は審理を経て、A社の特許はその核心的なインクの配合方法を公開されておらず、A社は該インクの配合方法の核心部分を秘密保持の措置を講じているとした。 公衆は公のルートからこれらの資料を入手できないと認定した。 T氏の契約違反は確定された。 T氏の行為によって、A社に与えた損失は刑事犯罪に及ばないが、企業秘密侵害罪と企業秘密侵害はそれぞれ刑事犯罪と民事犯罪の分野に入る。 二者の性質、構成要件、判断基準は違う。 刑事犯罪にならないが、民事犯罪にもならないとは限らない。 よって、T氏は契約違反であり、その行為はA社の企業秘密の侵害に当たる。 裁判所は民事訴訟法に基づいて、T氏に400万人民元の罰金を言い渡した。

コメント:

 日本企業は、上述の事例1、2、3が発生したような場合には、公安局の通報に先立って司法鑑定機構に鑑定を依頼し、鑑定書を入手しておくことが重要ですし、対応がし易くなります。
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